院長の俵です。
今回は便秘症についてです。クリニックには様々な症状の方が来院されますが、時々高度の便秘症の方が来られます。何日も排便がなく、腹部症状が強い場合は、緊急処置が必要になる事もあります。
(写真は最も一般的ななグリセリン浣腸液です。)
もちろん単なる便秘でなく、重大な病気が関与している可能性も考えなければなりません。排便の習慣にはとても個人差があり、1日出ないと『便秘だ』と感じ人もいれば、4日以上過ぎてから便秘を認識する人もいます。私は前者で1日でもスッキリしないと結構気になります。日本では従来便秘はあまり深刻な事との認識はない人が多かったです。しかし最近になり、便秘が原因で病気になり易かったり、逆に重大な疾患が原因で便秘になる事が分かってきました。たかが便秘と思わずに、もう少し深刻に捉える必要がありそうです。
数年前に『慢性便秘症診療ガイドライン』が刊行されました。医師は基本的にガイドラインに沿って診療するのですが、たかが便秘でもガイドラインが存在するのは、それだけ便秘症は奥が深いということです。ガイドラインによると便秘の定義は、『本来なら体外に排出すべき糞(ふん)便を、十分量かつ快適に排出できない状態』とあります。つまり便秘の日数は関係なく、毎日排便があっても残便感があれば便秘という事です。あるいは3日便が出なくても、お腹の症状がなければ問題ないことになります。
便秘の治療はその人の症状により様々です。出せば良いのであれば、強い刺激性下剤を使用しますが、強い腹痛を伴う場合もあり、調整が難しいです。センナやアロエに代表される刺激性下剤は常用すると、大腸にトラブルを引き起こしたりするため、長期間の使用は避けるべきです。わが国で1番処方されているのは、酸化マグネシウムです。ガイドラインでも最も高い推奨度で評価されています。確かに便を柔らかくする目的ではとても使い易く、当院でも良く処方します。但し最近では、マグネシウムの血中濃度が上昇する報告があり注意が必要です。
最近新規に開発された科学的根拠のある便秘薬などがあり、効く人は非常に満足されるケースもあるので、試してみる価値はありそうです。
日常生活で出来る便秘症対策は、食物繊維と乳酸菌の摂取です。ただし摂取量が多いほど良い訳ではなく、適度の量を摂る事が大切なようです。
これはあくまで私の見解ですが、大腸内視鏡を施行した際に、便秘症の方の方がより病気が見つかるケースが多い印象があります。
大腸の中に何日も便が残っている状態は、やはりあまり良い事ではないと思います。
このような事を踏まえて私自身も普段の診療の中で、便秘症の方の症状改善に対して、今後も一層気を配っていこうと思います。